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すてきな仕事人『お仕事インタビュー』

ロイヤルファームアカマツ 赤松美智子さん<前編>

2016年1月15日

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高松市香南町、「赤松牧場」の向かいで新鮮な牛乳を使ったジェラートを販売している「ロイヤルファームアカマツ」。TVや雑誌の取材をほとんど受けず、口コミだけでそのやさしいおいしさが広まっています。今、六次産業化に力を入れる農家や酪農家が増えていますが、このお店はいったいどのように誕生したのでしょうか。店主の赤松美智子さんにお話を伺いました。<前編>

 

「ものづくりって、こんなに面白いものなんだ!」

 

―赤松さんがこのお店を持とうと思ったきっかけはなんだったのでしょう?

実は、最初からお店を持とうなんて考えてもみませんでした。

でもなんかずっともやもやしたものがあって・・・。

牧場で搾った牛乳って、「赤松牧場の牛乳」として売られるわけじゃないんですよ。最終的には

複数の牧場の牛乳と混ざって一つの商品になるんです。どんなにこだわって、いいものを

作ったとしても、混ざって分からなくなってしまうんです。

なので、両親の仕事する姿を傍で見ながら、

「何のために頑張るんだろう?」

「誰のためにこだわるんだろう?」

ってずーっと思ってました。もっと直に反応が返ってきたらいいのに・・・と。

それでもまさか自分のお店を持つなんて思ってなかったですけどね。

もともと料理は好きでしたし、食品関係の仕事に就きたいとは思ってましたが、

普通に就職して仕事するものだと漠然と思ってました。

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赤松牧場の乳牛たち。ここで搾られた新鮮な牛乳がジェラートになっている。

 

直接的にお店を持つきっかけ、とまでは言えないですが、ものづくりの面白さを身をもって

知ったのは学校の実習でした。私は食品関係の大学に行ってたんですけど、そこで職場

体験ができる実習があったんです。どうせなら、なかなか就職できないような所を書いて

みようって遊び心もあって、東京の有名な洋菓子店を書いたんです。

そしたらそこに行けることになって。

実習って言うけど、私みたいな素人には何にもできないんです。

知らない人もいないくらいの有名なお店ですからね。

何もできずにボーっと立ってるしかなかったんですが、何もできないなりに、

材料や仕事ぶりをじっ~と見てたんです。

原材料がずらーーっと並んでる。

卵とか粉とか・・・。

それが目の前で、見たことないような繊細で素敵なお菓子に変わっていく。

「うわっ、ものづくりってこんなに面白いんだっ!」て感動すら覚えました。

魔法みたい!って。

私には、最後にそのお菓子に飾り用のチョコレートを飾らせてくれたんです。

それが店頭に並んだとき、ちょうど高そうな服に身を包んだご婦人が来て

「あら、それ貰おうかしら」って。もう大興奮でしたね(笑)。顔が熱くなって、

「それそれ!それあたしがチョコレートを挿したんです!!」

って言葉が喉まで出そうになりました。

私はチョコレートしか挿してないんですけどね(笑)

「ものづくり、こんなに面白い仕事は他にない!」と思いましたね。

それで大学卒業後に専門学校に行くことにしたんです。

 

―そのときからお店を持とうという想いが?

いや、それはまだです(笑)

専門学校を卒業してさあ就職、となったときに祖母が病気をしたので、いったん

香川に帰ってきたんですよ。

それで牛の仕事の手伝いをしたり、祖母の介護をしたりして過ごしました。そういう日々を

送りつつ、自分の中では焦りが出て来ていましたね。同い年の友達がみんな働いて自分

の力で稼いでるのに、私はまだ自立ができていない・・・。なにしてるんだろう・・・。と。

祖母が亡くなった後、「家を出る」と決めたんです。酪農関係の知り合いが口を揃えて

「行くならここにしたらええ」とすすめてくれたのが、北海道のある牧場でした。

それで、「勉強してくる」と、単身、北海道に行くことにしたんです。

 

はじめて行った牧場で、足がすくんだ。

酪農家の可能性を感じた。

1月にまず挨拶にだけ行ったのですが・・・。

はじめて行った牧場のその前に立って、足がすくみました。

こじんまりとした小屋なんかじゃないんですよ。全面ガラス張りの、ハイセンスな建物が

どーんと建ってて。真っ赤なんですよ。

一面銀世界で、雪しかない中に真っ赤なその建物がそびえている。

そこでたくさんの人が働いて、洋菓子やら、ケーキやら、色々作ってて。衝撃でした。

「これが牧場の直営店?!」って。

酪農家の可能性を全身に感じて震えました。

 

―単身、北海道に行くことに不安はなかったですか?

「一人で行く!」って言ったわりに、不安でしたよ。1月に挨拶行って、

いったん帰ってきて荷物まとめて車で出発したのが3月でした。

香川から舞鶴まで運転する間、ずっと「今ならまだ帰れる」「今ならまだ帰れる」って思ってました。

腹を括ったのはフェリー乗って後ろにピタッと車を駐められた瞬間でした。

もうこうなったら帰れない・・・と(笑)

 

北海道では色んな人に「仕事とは」「働くとは」ということを学ばせてもらいました。

最初は本当に辛かったですよ。家族もいない、友達もいない、会社は同い年だとしても

先輩でしょ。「何したらいいですか」と聞いたら「自分で考えて」と言われて・・・。

入社したてで何も分からない自分にできることって掃除ぐらいしかないから掃除してたら、

「今やる仕事じゃないでしょ!」と注意されるし。入ってからしばらくは毎日つらかった。

でも自分が飛び出して、1年はそこで仕事をすると言い出したので、「辞める」って泣いて帰る

わけにはいかないでしょ。

 

とにかく人より早く仕事覚えよう、人より早くできるようになろうと思ってました。

教えてもらう時ってメモをとるものじゃないですか。誰より早く覚えたくて

自分の仕事をやりながら、他の人の様子をちらちら観察してました。

「あのタイミングで粉入れるんだ。」「あの人今ミキサー低速で回してる」という流れを

逐一観察したんです。家に帰ってもう一回整理して。流れが頭に入ってるので、

教えてもらう時にはそれが確認作業になるんです。教えてもらったら、

すぐ「わかりました、やります」って言える。

最初は本当に辛かったですけど、香川に帰るころには楽しくて帰りたくなくなってましたね。

 

―仕事が楽しくなったのは、いつごろだったのでしょう?

ゴールデンウィークの一番忙しい時期を乗り越えた頃かな。

連休になると、観光バスが何台も停まる。お客さんが押し寄せててんやわんやになるんですよ。

ちょうどその前に、上司がポンポンと2人辞めたんです。

頼る人が居ないので不安でした。

連休はもうとにかく忙しかった。忙しくて、忙しすぎて、やるしかない。

でもそこを越えたら、追い詰められてたのがふっと軽くなりました。

「あ~、私が一番忙しい時期をやりきったんだ!」っていう自信が湧いてきて。

そこからは仕事が楽しくなりました。

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