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すてきな仕事人『お仕事インタビュー』

有限会社アール・ツゥ 長友恵子さん

2016年1月 7日

 

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香川にこんなすごい人が!?世界各国の職人が技を競うイギリス王室が舞台のフラワーショーで、日本人初のゴールドメダルを受賞したのは、高松市でエクステリアやガーデン設計施工の会社アール・ツゥを営む長友恵子さん。もともとは下請け100%だった小さな会社は、どのように変わっていったのでしょうか。長友さんにインタビューを行いました。

 

下請け100%から下請け0%へ。

「自分たちで、お客さんに合ういいデザインをやりたい」

 

―長友さんは、なぜ起業しようと思ったのでしょうか。

 

それ、たまに聞かれるんやけど、実は「起業しよう」と思ったことないんよ(笑)

 

前はミサワホームでばりばりやっとったんですよ。でも子どもがいたんで、予定が合わなくなってきて。それで会社は辞めることにしたんやけどね。

ありがたいことに、そこで縁が切れなかった。それまでガツガツ働いてたうえに、担当部署に私しかいなかったもんで(笑)、「家でやってくれたらええよ」って、引き続き上司が仕事の面倒みてくれて。よその会社さんも下請けの仕事を持ってきてくれたりしてね。

 

―他の会社の方もですか!そんなふうに辞めてもお仕事を任せてくれるというのは、信頼あってこそですね。

 

むっちゃ働いとったからね、ほんま(笑)

というのも、実は1998年当時で3Dパース(※)できるのは香川で二人しかおらんかったんよ。有名な先生と私だけやったんです。

 

※ 3Dパース・・・平面の間取り図を3Dに起こすこと、またはその図。CGで絵として見せられるため、顧客からも建物の外観・内観の完成図がぐんとイメージしやすくなる。

 

―二人だけですか!?

 

そうよ~。今は3Dパースなんか当たり前なんやけどね。当時はレンダリング(※作成した3Dの図形に色や質感、光源をつけていくこと)に8時間とかかかっとったね~。専門の先生に頼んだら30万円くらいいるところを、私がいたから安上がりやったというわけです。当時はほんとに貢献しとったんですよ(笑)

 

そんなわけで、「起業しよう」と思っとったわけじゃなくて、もらってきた目の前にある仕事をこなしているうちにいつのまにか・・・ていう感じやったなあ。

最初は設計だけ、下請け100%やったしね。

今は施工もするし、下請けは基本的にゼロにしとるけど。

 

―下請け100%から、下請けをゼロへ転換するきっかけはなんだったんでしょう?

 

下請けってね、お客さんの反応がじかに見れないんですよ。お客さんに喜んでもらえない。いいデザインを提案したりもできない。もくもくと施工して、なにかあったら元請けさんのかわりに謝りに行く。そういう仕事ばっかりやったんですね。

せっかく施工しても名前も出ないし。

たとえば、今は改装しとるけど、国際ホテルにある無印のモデルハウスの庭。あれもうちが施工したんですよ。

 

―そうだったんですか!?

 

ねえ~、ほら、知らんでしょ(笑)下請けって、表にはぜんぜん出ない。当時はほとんどのモデルハウスの庭をうちがやってたんやけど、どれも名前なんか残っとらん。名前が出るのは、謝りに行く時ぐらいで・・・・・・

これではだめやわと思って。

何のためにやっとるんやろうって。職人さんだって頑張ってやってくれとんのに、反応も聞けん。そんな仕事のやり方は、「なんか違うわ」と思ってね。

それで下請けは減らしていこう、自分たちでお客さんに合ういいデザインをやりたい、ということになったんよね。

 

―その後アール・ツゥさんは、イギリス王室で行われるハンプトンコートパレスフラワーショーでなんと日本人初のゴールドメダルを受賞します!

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2010年、英国王立園芸協会主催のフラワーショーで日本人初のゴールドメダルを受賞!

 

長友さんはどうしてこの賞に応募しようと思ったのでしょう?

 

カチンと来てたから(笑)

 

―えっ?(笑)

 

当時、色んな大手さんにデザインを次から次へと真似されたんですよ。作ったら作ったそばから。

私も腹が立つから調べたんやけど、実は不動産とかエクステリアって著作権がないんやって。ぶっちゃけ、今瀬戸芸で展示もしとる安藤忠雄さんの建築を私がやっても法律違反にはならんらしい(笑)。でも安藤さんは名前が知られとるし、真似したってそんなん誰でもわかるからやらんでしょ。

名前が知られとらんからって真似されて、泣き寝入りしかできんっていうのは悔しいやないですか。馬鹿にされとるみたいやもん。それで、実力を知ってもらわないかん!と。

カーッときて応募した(笑)。

 

香川でやっているから、「JAPAN」じゃなくて「香川」を造りたい。

 

―入賞しないと!という思いになりますね。

 

いやいや。それが、それどころじゃないんですよ。「とりあえず完成だけはさせないかん!」って、切羽つまっとって。誰も賞のことなんか考えてなかった(笑)まず完成するかどうかが心配やったんです。

それに、隣はずっと取材を受けとるんですよね。うちは特に注目されとるわけでもなかったんで、入賞なんかできるとは夢にも思っとらんかったんですよ。

ただ作品をちゃんと最後までつくりきろう、それだけを考えるので精一杯やったから。

 

賞とったときも、私、作品のとこにおらんかったんよ。

造るばっかりで観光もできんかったし、「せめて他の人の作品観てまわろうか~!」ってうきうきと物見遊山気分で周って帰ってきたら、「ゴールドメダル」のシールが貼られとって。誰もおらんで作品だけがBBCにずーっと流れよる (笑)通訳さんが撮影してくれとったんですけど、審査員がすごい褒めてくれとる。「なんやあ~惜しいことした~!」と思ってね。いたら映っとったのに(笑)

 

―エピソードが全部濃厚ですね。普通の人は絶対経験できないですよ(笑)

 

武勇伝はいっぱいあるんよ(笑) イギリスの話を聞きたい方は、お店に遊びに来て下さい(笑)

 

―イギリスで開かれた大会なので、英国風の庭園のコンテストなのかと思っていました。

お写真を見ると、造られたのは日本風の作品だったんですね。

 

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そうやね。実は、日本って言うか香川なんやで、これ。

漆器は全部香川のだし。使っとる石も庵治石。

この作品のイメージはこんぴらさんなんですよ。奉公さんがおって。傘は五人百姓でしょ、下の石積んどるのは石垣で・・・こんぴらさんをそのまま持って行った。

そりゃJAPANの方がイメージはしやすいやろうけど。

私らは香川でやっとるんやから、JAPANじゃなくて香川を造りたかったんですよね。

 

現場ガールを増やしたい!今は建築や施工も女の子ががんばっている。

 

―長友さんが働く上で大切にしていることはなんですか?

私らは芸術家じゃない、ってこと。

芸術家は自分の表現したいものを表現できる。でもデザインっていうのはお客さまの希望にぴったりのものを提案する仕事。だから、うちは和風も洋風もなんでもやるんですよ。

あと、解体の資格を持ってるんで、お客さんがおうちを解体するところから入らせてもらって、使えそうなものを残しておく。その思い出の品を使ってリガーデンするっていうのが人気です。新しいものって買えば手に入るけど、古いものって一個一個違う。それをゴミにして捨てるんはもったいないやろ。

賞のときも、造ったあとは壊すんやけど、うちは資材をフリーで持ち帰ってくださいっていうふうにしたんです。全部チャリティーにして、近所で欲しい人とか修道院に持って帰ってもらった。

それも好評やったね。

 

それから「メリハリ」やな。私、家庭に仕事は持ち込まんのです。他の子たちにも、残業、残業じゃなくて好きなことして欲しい。人生を大事にして欲しいな~とは思ってますね。そんなわけで昨日もみんな6時帰宅やし(笑)

 

―逆に、この仕事で難しい点などはありますか。

難しいっていうか、最近は「もっと安く、もっと安く」って傾向になっとるのは気になるなあ。

本物志向じゃないね、今は。

一生ものやし、うちはちゃんとしたものを使わないかんと思ってるんです。

でも最初は分かってくれんのですよね。他の会社の営業さんが来て、「うちなら安く出来ます」「それは上乗せされてますよ!」って言われたら、そっちに心が行っちゃう。

それで時間が経ってみたら不具合が出てきて、「これ、直せますか」とうちに来られることが増えたんです。言ってくれた通りでした、と。

もちろん、高ければ高いほど良いわけじゃない。でも適正価格というのがあると思うんですよ。安くするにはどっかでなんかを抜いとるってこと。

少なくとも消耗品と一生ものの買い物くらいは考え方を分けたらええのにな~、と感じてますね。ものの本当の価値をもう一度考えて欲しい。

 

―長友さんが思う、「この仕事だからの魅力」とはなんでしょう?

自分がつくったものがずっと残っていくことやね。ブロックひとつにしても「このブロックは自分が積んだんや!」って自信になるでしょ。それが増えていくっていうのはほんまに嬉しいですよ。それは、ものづくりの醍醐味やろうなあ。

 

―今まで作ったものが形として残るのは嬉しいですね。

これから先は、どんなことをやりたいと考えていますか?

せっかく庭もスペースもあるし、この事業所で英国風カフェをやる予定なんですよ。

 

あと、現場ガールを増やしたい。

今、建築業界は外国の人か女の子ががんばっとるんですよ!

うちも女の子3人が現場行ってます。一人の子は実家が造園をやってて、でも今は剪定とかだけじゃやってけない、エクステリアを習いたいというので来てくれていて。うちなら働きながら3DCADも学べる。先生に来てもらって講習をやってます。

力仕事やけど、それも楽しいみたいよ。やせてお金ももらえるって。3人が筋肉の見せ合いしよるわ(笑)

 

―施工や建築で女の子が増えている、というのは驚きました。

これから一緒に働く人、求職者へのメッセージはありますか?

若い頃って、何がしたいかなんてすぐに見つからんよね。

でもそういうもんやと私は思います。私だってもともと今の仕事をしようと思っとったわけじゃなかった。最初は経理やっとったもん(笑)これもやってみな、あれもやってみなと上司が提案してくれたことに挑戦してみて、目の前の仕事をきっちりきっちりとやってたら色んなことが身についた。私は、働く中で自分に合う仕事を見つけていくことにウェイトを置いてほしいと思ってますね。合わんなと思っても、頑張ってやってみれば面白くなってくることもあるし。

やってきた経験は自分のもんやけん。

学ぼうとしなかったら、そんだけ差は空いてしまうけどね。

 

 

―最後に、長友さんの休日の過ごし方を教えていただいてもいいですか?

私は休み、ないんよ(笑)でも仕事は早く終わるから、晩は色々していて。

絵を描いたり、日舞、お蕎麦づくりとか。習い事大好きなんですよ。前はワイン、チーズ、その他色々やっとったなあ。

私、ボーっとできんのよね。動いてないとダメなタイプらしくて、昔から寝ない。好奇心が半端ないんやろうね。

沖縄で海を眺めてボーっと・・・っていうのにほんまに憧れとるんやけど、そのときになったら絶対泳ぎに行くやろうなー(笑)

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